夫婦のアトリエも兼ねた、東京の都心の住宅街の中に建つ住宅です。
この住宅では敷地面積が小さく、かつ変形した形状であったため、高さ方向を有効に利用し、私生活と仕事の場が確保できる、立体的なアイデアが求められました。
そうした状況の中で本棚のように積層する家を考えました。敷地の外形に合わせて平面的に変形した箱の中に、本棚の棚板のように床スラブ(棚床)がいろいろな高さに浮かぶ構成でこの住宅はつくられています。各々の棚床に家具が配置されて、ダイニングやキッチン、リビングやベッドルームになります。大きな気積をもつ箱の中に、浮遊した生活の場が360度の視点で展開します。この住宅では生活の場が一方向へつながっていくのではなく、3次元的な距離で見え隠れしながらつながります。そうすることで各々の生活の場が平面的・断面的に隣り合い開放的でありながらも、同時に適度に分節された構成となっています。棚床は棚柱と呼ぶフレームに引っ掛かるのみで支持されているため、住宅の空間構成としても構造としても自由度が生まれてきます。棚柱のフレームは構造として機能するだけではなく、生活の場をサポートする役割も担っています。例えば棚柱のフレームがある場面では手すりになったり敷居のようになったり、また別の場面では本棚や洋服棚になったりと場面ごとに使われ方が変化していきます。生活そのものを収める、大きな家具のような小さな住宅になっています。