住宅と田畑がひろがる周辺環境に建つ、3人家族のための住宅です。
地元で採掘される大谷石でつくられた囲いの中に、大屋根を支える放射状の壁がひろがることでそれぞれの生活空間をつくっています。敷地は袋小路の突き当たりに位置し、心地のよい奥まった感覚を感じる場所であり、隣家の庭や畑、洗濯物などが垣間見えて、近隣の気配も感じられる開放的な場所でした。近隣の人たちと庭越しに挨拶を交わしたり、塀をまたいでお互いに行き来するといった風景がひろがる場所でもあります。
そのような場所に、家族の生活が周囲と連続しながら包まれている住宅を目指しました。家という箱ではなく生活の囲いをつくり、そしてその囲いは出入り口をつくる外壁になったり、周囲を眺める窓の高さによって塀になったりと、生活の動きによって変化していく住宅を提案しました。平面的に偏平したこの囲いの中には壁が放射状にひろがり、その間に家族が集まったり離れたり、少し隠れたりという変化する距離を感じながら生活していく構成になっています。この壁はアーチ状に連なり大屋根を支えていて、その間に大きさの異なる生活の隙間をつくっているのと同時に、中心にはアーチに囲われて包まれた空間をかたちつくります。中心からひろがり、同時に中心にむかっていくような視点を意図しています。囲うことと仕切ること、その構成によって周辺とともに多様な生活が展開する住宅を目指しました。